大子那須楮皮むき体験レポート


昨年7月、メンバーの新木が「日本製」スピンオフ編に掲載された茨城県大子那須楮保存会 齋藤会長を訪れた際「体を張ってお手伝いがしたい」との思いをメンバーで共有し、それ以来プロジェクト内で体験に向けて話し合っていました。


現地での不確定な作業日程に対応できるのか心配な点はありましたが、出来るだけ対応出来るよう準備をしていました。そして齋藤会長に事前にお伺いを立てて楮の皮むき体験の機会を頂き、初めて齋藤会長宅を訪れてきました。



大子町訪問前に公的機関のPCR検査陰性を確認し、コロナ感染拡大防止に配慮し、公共交通機関の利用を避け、1月23日に車で茨城県大子町に移動し翌朝からの作業に備えました。


作業当日、天気は晴れ。

宿泊地から車で20分程で目印の大子那須楮の旗のある齋藤会長宅へ到着しました。


作業場を探しながら小路を緩やかに下りていくと作業場では既に皆さん黙々と皮むき作業の真っ最中でした。

ためらいながら挨拶をすると一斉に集まった視線にひるんでしまいましたが、挨拶もそこそこにすぐ作業に取り掛かりました。



作業場には蒸した楮の束が冷めないよう麻の布で覆われたものがいくつもあり、それぞれの束の前に分担して座り作業をしていました。


私は会長の奥様と向かい合わせに座り皮むきの手解きを受けました。


楮は冷えていくと皮がむきにくいので麻の布をめくり少しずつ表に取り出し皮むきしていきます。

蒸し上がった楮はほんのり甘い香りがします。


温かい楮の端にタオルを絞るように両手をかけ捻り、そこに寄ったシワを切り開いて皮と幹とに分けていきます。 

次の仕上げ工程「表皮とり」作業のしやすさのために開いた端はほつれのない綺麗なものが良いとのことですが、チャレンジ1本目、要領が掴めず力んでしまってかなりの時間がかかり繊維が絡まりギザギザに仕上がってしまいました。


そんな私の仕上がりを見兼ねた奥様は丁寧にフォローしてくださいました。


右手で皮をむいたあとの幹を床に並べおき、左手には直前にむいた皮を持ったまま次の楮を持ち、次々と切り開いていきます。

まだ慣れない私は5本分くらいの皮を左手に溜め置いてから床にまとめて置いていく…という手順の繰り返しで1時間程作業し続けました。


向かいの奥様はなめらかな動きで一瞬で皮をむいていきます、それはそれは見事です。


私はなかなかコツを掴めないまま1束分の皮むき作業は終わってしまいました。 


そして楮の皮と幹とに分けられたものはそれぞれ束ね片付けていきます。


しばらく皆さんのテキパキとした動きに呆気に取られてしまいましたが、皮の束ね方も教えていただきどうにかこうにか1回目の作業を終えました。

2回目の楮はまだ釜の中で蒸されていて蒸し上がるまでの間、皮をむいた後に出る大量の幹の行方が気になり保管先に連れて行ってもらいました。


幹は作業場から少し離れた所に高く積み上げられて乾かされていました。


幹のことを地元の人は「こうずっから」と言い、昔は風呂などの焚き木として使っていたとのこと。皮むきした人が持ち帰っていたほどだったとか。電気ガスが普及した今では大量に出る「こうずっから」の処理も大変なのだそうです。


また、作業する側にとっては冬場の暖かい日は有難いと思ってしまいますが、楮の皮と幹にカビが生えやすくなり管理は容易でないと聞きました。


そうこうしているうちに2回目の楮が蒸し上がりウインチで釜が持ち上げられました。間近で見る大量に立ち昇る湯気は迫力満点です。


釜の中には80㎝に切り揃えられた楮7束とその上に曲がったもの2束が入っていて、釜場から作業場へアルミの梯子を渡し、呼吸を合わせて梯子の上を次々と滑らせて作業場へと送っていきます。更に作業場側に届いた楮の束を持ち場まで運ばなくてはならないのですが、蒸し上がった楮の束は有に30キロは超えていて2人掛かりでも骨の折れる作業でした。


慣れた仕事とはいえ先輩たちの仕事ぶりに感心してしまいました。


そして2回目の皮むきタイム。ご迷惑にならないように少しでも綺麗に仕上げるよう意識して無我夢中で皮むきしました。


2回目の皮むきを終えた10時頃に休憩があり、皆さんテーブルに集まりおやつタイム。



会長の奥様手作りの甘酒、シャキシャキの白菜の漬物、カリカリで色よく漬けられたたくあんなど、この後の作業がなければずっと飲んだり食べたりしていたい程の美味しさでした。


奥様が皆さんにお茶を勧め注ぎ入れる仕草が義母を思い出し懐かしくもあり、ここで作業する人たちの親密な関係性がよくわかり心があったかくなりました。思わぬご褒美タイムに緊張も疲れも吹っ飛んでしまいました。


自然豊かな地で暮らす方たちはよそ者も温かく迎え入れてくださる心豊かな方ばかりだなぁと有難く思いました。


リフレッシュ後の3回目はなんとなくコツを掴み、だいぶリズムよく作業できるようになりました。が、午前中最後の4回目にもなると初めの頃の力みが響き握力がなくなっていき悪戦苦闘しましたが、どうにかこうにか作業をやり終えました。


午前の作業後、春馬さんが体験した「表皮とり」の作業場と仕上がった楮を見せていただきました。


地元では「表皮とり」は「ひょひとり」といい、今回その「ひょひとり」の体験はできなかったのでどのようにやるのかどうしても知りたくて、齋藤会長に無茶ぶりしてしまいましたが、快くやる仕草を見せてくださいました。その会長の優しさがうれしくてうれしくて…本当に感謝の思いでいっぱいの体験となりました。


今回、私の日程上半日しか体験できませんでしたが、とても貴重な経験となりました。次回は丸1日お手伝いできるよう余裕を持って大子町を訪問したいと思いました。


帰り際、皆さん思い思いにお昼休憩をとっていて残念ながら皆さんにお礼はできなかったのですが、最後にご挨拶できた方から「鼻をかむと真っ黒だよ」と言われて、鼻をかんでみましたが言うほど汚れてはいなかったのですが、マスクは灰を吸着して真っ黒になっていました。


髪の毛は釜の灰を被ってゴワゴワ。フード付きの上着を着ていったにも関わらず被る事も忘れてなりふり構わず作業に夢中になっていたようです……。




12月から始まった皮むき作業はおおよそ6日に1回のペースで3月まで続きます。


この貴重な伝統産業を支えている方たちの高齢化に伴い後継者不足が課題となっていると聞きます。

美濃市との交流で行政と生産者の連携が強固なものとなり永続的に産業が続くことを心から願っています。


そしてプロジェクトとしても重労働を少しでも軽減できるお手伝いができたらいいなぁと思いました。

この度の体験を通してもっと取材できたなと後悔する点もありますが、今回は皮むき体験に重点を置いたレポートといたします。


身体にしみつい楮の匂いが微かにする車の内で朝からの出来事を振り返り、今回の伝統産業へのご縁を下さった皆さまに感謝しながら春馬さんが愛した茨城を後にしました。



最後に…

あの時の想いはきっと何かに繋がっていく気がします…

「日本製」岐阜県の回で語っている春馬さん。

そんな春馬さんの想いを継承し、春馬さんを想う人たちで少しでも繋ぐお手伝いができるならどんなにいいことかと思います。

体力自慢の春友さんへ

皮むきのお手伝いいかがですか?

※尚、茨城県も1月27よりまん延防止等重点措置の適用を実施中。

2月2日より体験等はお断りしているとのことです。


「茨城愛」をベースに日本の産業に気を配り多忙の中取材をしていた彼の熱量を感じると共にそのような素晴らしい俳優は彼ひとりだとの想いを新たにした大子町訪問でした。



訪問日:2022年1月24日

訪問者:三浦春馬応援プロジェクト wiwaki

おまけ:茨城の

三浦春馬応援プロジェクト

CandleNight0405 -2nd- 2022年4月5日CandleNightをリモートにて開催いたします。